毎年、寒い季節になると急に繰り返し嘔吐するカゼ、ウイルス性胃腸炎が必ず流行します。 この原因ウイルスの代表がノロウイルスです。 ノロウイルス胃腸炎は冬に一番ありふれた「おなかのカゼ」です。 小児科の冬の外来には毎日何十人も受診します。ですから特別に怖い病気ではありません。 恐怖をあおるだけで正しい医学情報を伝えないマスコミ報道には振り回されないようにしましょう。
① 冬季には昔からもっともありふれた病気 ② 元気だった人が急に何回も吐き出す ③ 自然の経過でほとんどの人が6~7時間から半日で楽になる ④ 保育園などと違って、ご家庭での汚れ物は普通の洗濯で充分で、汚れた手はよく洗えば良い ⑤ 何度もウイルスに触れることで抵抗力ができ、小学生以上になるとかかることは減ってきます
これらの基本的な情報や、どう対応すれば良いかなど大切なことをマスコミはほとんど伝えません。
脱水にならないように大切なのが『経口補液療法』で、ORSを積極的に補給します。 ORSはアクエリアス、ポカリスエットなどのスポーツドリンクとは全く違って胃や腸からの吸収が非常に良い「飲む点滴」です。(市販のスポーツドリンクは塩分が少なく、糖分が多過ぎるのです) ほとんどは12時間以内に自然に回復するので、経口補液療法で回復するまでに脱水にならないようにするのです。 吐きけ止めの薬や坐薬は、吐き気の強い時期にはあまり効果がないことが分ってきています。 ORSは、〔和光堂ORS〕〔大塚OS-1〕として市販されています。 自家製ORSを作ることもできます。 砂糖40g+食塩3gを湯冷まし1リットルに溶かして作ります。 更に、果汁(レモン・グレープフルーツなど)を絞り入れると飲み易くなり、カリウムの補給にもなります。
吐きはじめて30分ぐらいたって、少し症状が落ち着いてきたら与えはじめましょう。 嘔気が強い時には、吐いてから1~2時間の間は何も与えない方が良い事もあるので、顔色・表情など様子を見ながら進めます。吐いても欲しがるようならこまめに与えてください。 1回10~20mlといった少量で、30分毎にゆっくりと繰り返し根気よく少量ずつ、何回にも分けて与えます。2~3回飲んで吐かないようであれば、その次は50mlくらいに増やします。 (吐き気が強い時は、スプーン1杯から始め、5分おきに少しずつ飲ませます) 飲ませる量の目安は3~4時間で、ORSを 乳児で300~500ml程度、幼児・学童で500~1000ml程度 ですが、状況によって違ってくるのでおしっこが出る事、元気が良くなる事が目安です。 欲しがったらどんどん飲ませて結構です。 その後、嘔気がおさまってくるとORSはおいしくなくなってきますので、好きな飲み物に変えてください。 *半日以上経っても全く水分が取れない時がまれにあります。この時は受診が必要です。
食事は早く再開し、最初は消化の良いお粥・うどん・お茶漬けでも良いのですが、食欲があるときはどんどん普通の食事に戻します。 最近の研究ではその方が胃腸の回復が早い事が分っています。下痢があっても食欲があったら食べたい物をあげてください。やわらかくしたり、消化の良い物を与える意味はありません。