季節のありふれた流行性疾患にかかることを恐れて子育てさせられているのは2002年ごろからの日本の親御さんたちだけです。
欧米先進国では「季節のカゼ」に「かかったら怖い」からと「びくびくして」子育てしていません。
メディアによる子育て妨害だと感じます。
その代表がインフルエンザ・ノロ・手足口病です。
日本でインフルエンザにかかる人はひと冬で1千万~2千万人
大人はそれほどかからないので、幼稚園保育園以上で中学生くらいまでの子どもたちがほとんどかかる、という数です。大流行の年は1500万人以上かかるといわれています。
それが深刻な病気であれば国から子供がいなくなるはずです。
毎年のようにインフルエンザウイルスに触れ続けることで抵抗力ができていきます。
ですから高校生以上になると学級閉鎖はほとんどないし、会社閉鎖もありません。
罹りそびれた子どもは受験シーズンにかかってしまう可能性があります。
「インフルエンザはかかると怖い」「手洗い・うがい・マスクで予防」というような非科学的な報道をするのは最近の日本だけです。
インフルエンザにかかっても3割は熱が出ない
この方たちを見つけだすことは不可能です。
鼻水、咳のみで熱がなくても弱いながらも感染力はあります。
このため流行期の人混みはインフルエンザウイルスだらけなのです。
怖い病気ではなく、かかって丈夫になる、しかしかかるとつらいことも多い、という病気です。
インフルエンザによる「学級閉鎖」の意味
インフルエンザにかかると怖いから学級閉鎖をするのではありません。
インフルエンザは1メートル程度の近距離での感染力が強いので、子どもの集団で流行しだすとあっという間に拡大します。
そうなると学校・園で授業進行の混乱が起こり、何より医療機関がパンクしてしまいます。
そのため「ゆっくり流行が広がるように」学級閉鎖をするのです。
「かかると怖いから」学級閉鎖をする麻疹(はしか)などとは全く違います。
麻疹は500人に1人亡くなる非常に恐ろしい病気なので、一人出たら保健所に報告し、翌日から「全校閉鎖」も検討します。
検査に関して
インフルエンザは迅速検査で診断するものではありません。
最近の調査では、インフルエンザにかかっていても40%程度は検査が陰性になることが分かっています。
一回当たり約3000円の税金・国民医療費を使っていることは知られていません。
検査は必要があると医師が判断したときに、あくまで参考にするだけです。
予防に関して
*マスクについて
健康成人がインフルエンザを怖がってマスクをしているのは日本だけです。
厚生労働省のHP「インフルエンザ総合対策」にも「マスク・手洗い・うがいで予防」とは書かれていません。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/influenza/
成人は過去にたくさんインフルエンザにかかり抵抗力(免疫)を持っています。
私たち小児科医師は特にマスクをしなくてもインフルエンザにかかりません。
毎年ウイルスに「触れる」ことで強い免疫力が維持されているのです。
(カゼの仲間ですのでたまにかかることはありまあす、特に過労や睡眠不足の時です。)
「今はいろいろな病気にかかりたくない」という受験本番2週間前の受験生はマスクをしましょう。一番の大敵は睡眠不足です。
かかるなら受験の1か月前にかかった方が良いと思います。
のどが痛い、咳がひどいなどの時はマスクをしてください(これが咳エチケットです)。
帰宅時にうがいをすることは、カゼ・インフルエンザの悪化予防として習慣にするとよいと思います。
「子どもがかかったから親が会社を休む」のはナンセンス
前にも述べたとおり、人混みはウイルスだらけです。
もし感染が怖いと会社が言うのなら、社員の電車バス通勤は禁止せねばなりません。
元気な大人に「休みなさい」「診断書を持ってきなさい」というとても文明国とは思えない指示をする会社がまだあります。
厚生労働省の指導力が欠けているからです。
自分がつらい時はもちろん休んでください。
高齢者の介護など特殊な職種の方は職場の規則に従ってください。
治療に関して
*タミフル等はインフルエンザの症状を軽くするだけ
タミフルは2000年に開発された薬です。
しかし、それまでインフルエンザになったら治らなかったのでしょうか?
抗インフルエンザ薬の効果は発熱期間を24-36時間短くする、というものです。
インフルエンザの重症化を予防する効果もありません。
使用しなくてもインフルエンザは治ります。
ただし、つらい時は発熱後48時間以内に服用すると早く楽になることが多いので、そういった意味でありがたい薬です。
インフルエンザワクチンに関して
インフルエンザワクチンは接種により
●つらい発熱などを30%程度予防できるといわれている
●乳幼児のインフルエンザ脳症については、予防接種により3割程度減少するのではないかと推定されている
●その年のインフルエンザに対する抵抗力をしっかりつけて、その積み重ねで丈夫になっていく
という効果です。麻疹やおたふくかぜのように、かかると怖いので接種しているわけではありません。
マスコミが報道すべき事
世界でインフルエンザシーズンに受験をさせている国は日本だけです。
韓国は11月、欧米は春秋です。
大雪による交通マヒが多く、インフルエンザが流行る時期になぜ受験をさせるのでしょう?
受験当日に高熱で受診される受験生が毎年大勢います。
全国でどれほど多くの受験生が悔し泣きしているのでしょう。
インフルエンザに関する最も重大な社会的問題だと思いますが、このことについての報道をご覧になったことがあるでしょうか。
おたふくかぜワクチンは世界中で定期接種されています。
日本に生まれために難聴になってしまう子どもが毎年500-1000人もいるのです。
モンゴルも、カザフスタンも、ブラジルも、キューバも発展途上国の8割以上がすべての子どもにおたふくかぜワクチン接種をするようにしています。。
予防できる病気で、世界中で予防している病気で、日本に生まれたために多くの子どもたちが犠牲になっている。
どうしてこのことを多くの日本人は知らないのでしょうか?
毎年流行するインフルエンザやノロウイルスをむやみに怖がることと、一生つづく後遺症を残す病気とどちらが大事でしょうか。
マスコミの報道すべきことはありふれた病気では正しい知識を伝え、もっと重要な病気についてしっかり伝えることです。
そしてインフルエンザが流行る大雪の時期に受験をさせる、世界唯一の子ども虐待国である事を伝えること、毎年そう考えずにはいられません。
*参考HP
日本小児科医会 主催「第7回 記者懇談会」レポート(2019.12.4)
https://www.jpa-web.org/blog/2019/12/10/225